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「どのように物流を考えたらよいのだろう」「どこに問題があるのか知りたい」という方のために、物流改善に関するポイントを紹介いたします。

「もっと話を詳しく聞きたい」「実際に意見が欲しい」というご要望をお持ちになられた方は、いつでもお気軽に当事務所にご相談ください。親身になってお話を伺い、ベストな解決策をご提案いたします。

物流の改善を進めるには、まずどのレベルの改善を目指すのかを決める必要があります。

レベル①…サプライチェーン全体の最適化を目指す
レベル②…自社内の製販連携や在庫管理、顧客に対する物流の最適化を目指す
レベル③…物流センターの作業生産性、作業品質の向上を目指す

このレベルをある程度明確にしないと、改善を図るためのターゲットがぼやけてしまい、具体的な改善策がまとまらなくなります。
極端な話し、レベル①を検討するのであれば、レベル③の物流センター内の業務改善については議論しないくらいのことが必要になります。

レベル①は、自社だけでなく、サプライヤーや顧客を巻き込んだ物流、ロジスティクスの改善となります。
そのため、前後工程の関係先を含めて、全体最適が図れるように議論を進めなければなりません。
サプライヤーといっても、一社だけではないと思います。
顧客も同様に複数にまたがります。
それら、複数の関係者を集めた議論が必要になります。自社だけでなく、関係者が改善に向けた取り組みに合意することを目指さなければなりません。

レベル②は、自社内の物流全体の改善を目指すものとなります。
製造業であれば、生産計画、販売計画をすり合わせ、ムダのない生産・販売・在庫となるような物流計画を作り上げます。
流通業であれば、仕入先からの調達や販売先への物流効率化を実現させるための施策を検討します。
自社内であっても、各部署が追求する目標はそれぞれ異なる場合があるので、これも全社の最適化を目指す視点が求められます。

レベル③は、主に物流現場での改善となります。物流担当者や現場責任者が生産性や物流品質を上げ、物流のレベルアップを目指す活動を進めます。
作業の生産性を上げることでコストダウンを図ったり、物流品質を向上させて顧客満足度を高めたりする活動などを推進していきます。作業者が働きやすい環境を作り上げることも目的となります。

以上のように、物流改善の施策を検討する際は、その目指すレベルを意思統一することから始めることが必要です。

トヨタ生産方式における改善とは、「ムダの徹底排除」を進めることです。
あらゆるモノやコトにおける“ムダ”を排除すること。それが改善ということになります。

そして、トヨタ生産方式において、ムダは7つあると言われています。
私も物流会社にいたとき、トヨタの人に改善の指導を受け、その際に7つのムダについても教えられました。

「7つのムダ」とは、以下のものです。

①進み過ぎのムダ(作り過ぎのムダ)
本来手待ちにならなければいけないのに、次の作業を行ってしまうムダ。
そうすると手待ちが隠れ、ラインの後や中間に在庫の山が発生する。
さらにこの在庫を移動したり、積み直したりといった「仕事と勘違いする仕事」が発生する。

②手待ちのムダ
機械の前でただ番人をしている、機械が動いていて手が出せない、前工程から商品が届かずじっとしているなどの、何もしない手持ち無沙汰の状態のムダ。

③運搬のムダ
必要以上の運搬距離とか、一時的な仮置き、積み替え、移動のために生じるムダ。

④作業そのもののムダ
作業手順に個人差があり、スムーズに作業が終了しないムダ。
業務が「標準化」されていないために発生する。

⑤在庫のムダ(持ち過ぎのムダ)
仕入先からの納品が多かったり、各工程間に仕掛品が沢山あるムダ。
需要予測が上手く行われない場合にも発生する。

⑥動作のムダ
作業工程の中で付加価値を生まない人の動きや機械設備の動きのムダ。

⑦不良・手直しのムダ
不良品や手直し品を作ったり後工程に送ってしまい、そのために品質を低下させ、原価を高めるムダ。


ただし、上記の7つのムダは、あくまでもトヨタという自動車メーカー、またそこで行われている物流において発生しているムダということになります。
従って、他の企業や業種においては、ムダは7つに限るわけではありません。

ちなみに、トヨタのOBの方から聞いた話ですが、この7つのムダを提唱した大野耐一氏(トヨタ生産方式を作り上げた方)に、そのOBの方が『なぜ、7つなのですか?』と聞くと、『人はなくて七癖というだろう。だからトヨタにおいてもムダは7つくらいはあるのだ』と答えたそうです。

つまり、7つのムダはトヨタの現場において言われているムダであり、会社や職場によっては、7つとは限らないわけです。

たとえば、物流現場で発生しているムダには、
・やり方や場所がわからず、悩んだり探したりするムダ
・情報が聞き流されるムダ
・人が多すぎるムダ
・空気を運ぶムダ
・廃棄のムダ
などがあるでしょう。

自社の物流改善においては、「ムダは7つなのだ」と決めつけることをせず、「トヨタの7つのムダ」を参考にして、どのようなムダがあるのかを見つける。
そして、それらのムダを徹底排除するという取り組みが重要になります。

在庫を所有している企業では、在庫の保管業務が必要となります。
その在庫保管における管理で最低限押さえておかなければならない基本は、以下のことです。

①「何が」
②「どこに」
③「いくつ」
あるのかを正しく把握できるようにすること。

まず最初は、「何が」です。
単品ごとに、何があるのかを分かるようにしておかなければいけません。

次に、「どこに」です。
ここにある、ということを明確に分かるようにします。
状況によっては、同じものでも、複数の場所に置かれることがあります。
その場合、それぞれの場所を分かるようにしておくことが必要です。
ただし、保管場所(ロケーション)は『大体この辺りにある』というレベルで把握することで構わないこともあります。
品目の数、外観、保管状況等によって、『この付近にある』と分かるだけでも十分な場合もありますので、どこまで厳密に「どこに(ロケーション)」を把握できるようにするかは、状況によって判断してください。
また、保管場所は、特定の人だけが分かるということではいけません。誰にでも『ここにある』ということを分かるようにすることが重要です。

そして、「いくつ」です。
保管している場所(複数に分かれている場合はそれぞれ)ごとに、いくつあるのかをつかめるようにします。

在庫管理では、以上の「①何が」、「②どこに」、「③いくつ」が把握できるようになっているか否かをチェックしてください。

誰でもいつでもすぐに在庫が分かるようにする。それが在庫管理の基本です。

経営において、掛かる物流コストを評価することが必要になります。特に小売業では以下の指標を活用することも有用です。

企業全体の物流コストを評価する指標として代表的なものは、「売上高対物流費率」です。
売上高に対し、物流コストがいくら掛かっているのかを見るものです。
たとえば、売上高100百万円に対し、物流費が3百万円であれば、売上高対物流費率は3%となります。

しかし、企業によっては、売上が発生するタイミングと物流費が発生するタイミングがずれていることがあります。

商品が物流センターから店舗に出荷されたタイミングが1月だったとしても、店舗でその商品の売上が立つのが3月ということもあり得るわけです。
この場合、1月度の売上高対物流費率は正確とは言えません。
(物流費の計上は1月、売上の計上は3月となる)

そこで、小売業の場合、以下の指標を活用することもお勧めします。
それは、「出荷売上高対物流費率」です。

小売業、特にチェーンストアの多くは物流センターを設置し、そこで商品の保管や出荷が行われています。
まず、分子の「物流費」は、物流センターの運営費や保管費、配送費など直接的に物流に掛かった費用を計上します。

そして、分母の「出荷売上高」とは、その物流センターから出荷されたタイミングでの売上高を計上するものです。
出荷売上高は商品マスター上の売価での売上高となります。
(細かいことをいうと、店舗で特売や値引き販売が行われると、実際の売上高と出荷売上高は異なることになります)

この「出荷売上高対物流費」を算出することにより、物流部門が管理する物流費が期ずれを起こすことなく評価できるようになります。

なお、「出荷売上高対物流費」は物流部門が管理する指標として活用するもので、全社的には「売上高対物流費」も重要な指標であり、その両方を見ていく必要があります。
従って、物流コストを評価する場合、全社の経営的には「売上高対物流費」、物流部門としては「出荷売上高対物流費」を管理していくことをお勧めします。